共創の場をつくる会社=共創を育てる会社。株式会社オカムラのCueでの社内イベントに登壇して感じたこと

2026年9月15日、名古屋で開催されたオカムラさんの社内向けの共創イベントに登壇させていただきました。大変光栄なことに同社の河野専務とご一緒させていただき、「共創ってなんだろう」という内容でお話しさせていただく機会をいただきました。
(当日の内容で、公開情報などと、私自身が感じたことなどを中心にお伝えさせていただきます)

オカムラは、「WORK MILL」という活動を通じて、これからの働き方や働く場について探究し、発信している会社です。私なりに表現するなら、「はたらく」のワクワクを科学し、実践している会社だと捉えています。

東京の「Sea」、名古屋の「Cue」、大阪の「bee」、福岡の「Tie」と、全国4都市に共創空間を展開し、組織や立場を越えて人が出会い、新しい価値を生み出す活動を支えてきました。私にとってオカムラさんは、「共創」の最前線で、実践を積み重ねている企業です。

私が所属するコー・イノベーション大学は、「共創」学部であり、大学名を共創(コー・イノベーション)とする大学に所属する私にとっても、極めて学びの多い時間でした。対話を通じて改めて大切だと感じたことを書き留めておきたいと思います。

目次

「共創って、説明できますか?」

最初に、会場の皆さんにこう問いかけました。

「共創って何ですか、と聞かれて、説明できる人はいますか?」
きょとん・・・・
シーン・・・

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いざ言葉にしようとすると難しい。身近な言葉である一方で、思い浮かべる場面や経験は、一人ひとり少しずつ違うのだと思います。

Co-Innovation University(コー・イノベーション大学、通称CoIU)では、共創を次のように定義しています。

地域、組織、所属する立場を越境し、異なる環境に属する人たちが、各々の知識や経験を掛け合わせ、複雑な課題を解決することを目指して、一緒に行動すること

この定義の中で大切なのは、「越境すること」「知識や経験を掛け合わせること」、そして「一緒に行動すること」だと感じています。

地域にも企業にも、一つの専門分野や一つの組織だけでは解決しにくい課題が散見される時代に突入したと考えています。その中では、自分の知識や経験を大切にしながら、違う背景を持つ人の力も借り、話し合いを重ね、実際に一緒に動いてみることが必要だと思っています。さらにその過程で、自分たちだけでは思いつかなかった可能性が見えてくることがあります。

共創は手段。でも、共創する力を育てることは目的にもなり得る

続いて、「共創は目的ですか、手段ですか」と聞いてみました。
多くの方が手を挙げたのは、「手段」でした。

共創を通じて何を実現したいのか。その先にある価値を見据えていることが伝わってきました。

私も、課題を解決したり、新しい価値を生み出したりするうえで、共創は手段だと考えています。同時に、共創できる人を育てることや、共創が生まれやすい文化をつくることは、それ自体が大切な目的になるとも思っています。CoIUが目指しているのも、そうした人材を育成することにあります。

オカムラの取り組みから感じたこと

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① 経営層が、共創の「応援第一人者」であること

河野専務は、ご自身を「応援第一人者」と発言されていました。

共創を担う人たちの提案を後押しする。ワークショップでも、自ら輪の中に入って参加する。取り組みを任せるだけでなく、一緒に面白がる姿勢が、とても素敵だと感じました。まさに当事者意識を持って率先して、輪に入って、その中では年齢や役職を超えてフラットに対話を行うこと。とても重要なことだと思いました。

新しいことを始めるときには、「こんなことをやってもいいのだろうか」という迷いがつきものです。そのとき、経営層が関心を持ち、応援してくれることは、挑戦する人にとって大きな支えになると思いました。

② 共創アンバサダーという、活動を支える仕組みがあること

部門の壁を越えてつながり、共創を担う人を各部門に増やしていくための活動として、「共創アンバサダー」制度が始まったことを伺いました。

理論と実践を行き来しながら共創を学び、それぞれが自分の仕事や関心と結びつけてプロジェクトに取り組む。共創を、自分の仕事の中で活かせる力として育てていくプログラムだと感じました。

③ 経営理念と、共創の場

オカムラさんの経営理念は、「人を想い、場を創る。」です。
まさにこれが浸透していると感じました。

私自身の話と重ねて考えてみました。10年ほどのお付き合いをさせていただいていますが、こんな取り組みを行なったことを思い出しました。

名古屋の共創空間「Cue」で、コロナ禍の2020年から2021年にかけて、「Cue Dream Project」に取り組みました。

オンラインで一人ひとりの「やりたいこと」を持ち寄り、お互いに応援し合う。立場や所属を越えて集まった人たちが、誰かの夢を一緒に面白がり、アイデアを出し合う。複数回にわたるプロセスの中で、起業や新しいプロジェクトも生まれていきました。

そこで感じたのは、継続して関わり合えることの力です。最初はまだ曖昧だった思いが、人に話し、問いかけてもらい、応援されることで、少しずつ形になっていく。誰かの「やってみたい」が、周りの人にとっても「一緒にやってみたい」に変わっていく。その過程に、共創の面白さがありました。

研究論文としてもまとめて公開しました

2023年に『地域活性研究』に掲載された、「関係人口創出に向けたオンライン環境を活用した共創の場の可能性」です。

論文では、Cue Dream Projectでの実践や、夢や思いを持ち寄ったテーマオーナーへのインタビューなどを通じて、オンラインの共創の場が持つ可能性を検討しました。個人の思いを起点に人が集まり、地域の人たちとも協力することで、時間や場所の壁を越えた交流や協働の機会が生まれることに着目しています。

私にとってCueは、共創を一緒に実践する場であり、その可能性を研究者として考えるきっかけをいただいた場でもあります。

また、Cueの取り組みは、私も関わった書籍『共創の強化書―学び成長し続ける自分のつくり方』でも、企業による共創の事例として紹介しています。

今回のお話を聞きながら、あのときに感じた共創の面白さと、それを支えてくださった皆さんの姿を思い出しました。

④ 「0次開発」で、まだ見ぬ可能性を探っていること

河野専務から紹介いただいた今年の取り組みの「0次開発」も、印象的でした。

6,000件を超えるオカムラの特許とAIを掛け合わせ、部門を越えた社員の皆さんで「まだ存在しない未来の職業」を50に絞り込み、展示会を通じて社外の共創相手を探していく取り組みだそうです。

この世界観は、「0次開発Project まだ存在しない未来の職業展 2045」のサイトで紹介されています。

自社が積み重ねてきた技術を、これまでとは違う視点で捉え直す。AIで発想を広げ、人が対話しながら可能性を選び、社外の人と一緒に形にしていく。

技術、部門、人、組織。それぞれの境界を越えながら、新しい接点を探しているところに惹かれました。こうした探索に踏み出せることも、共創の経験を積み重ねてきた組織の強みなのだと思います。

⑤ 共創を支える経験が、人に蓄積され、共有されていること

WORK MILLの皆さんは、長年にわたり、さまざまな共創の場をつくってこられました。企業の組織文化を活性化したいという相談にも応えていると伺いました。

オカムラの庵原悠さんによる書籍『ゼロからの共創―「わからない」「うまくいかない」の壁を突破する方法』では、共創が求められる背景から、場づくりや運営の方法まで、多角的に整理されています。

実践を積み重ね、その経験を言葉にし、次の担い手を育てていく。この循環があることに、オカムラさんの取り組みの強さを感じることができました。


私自身、共創には「渦」のようなところがあると思っています。一つの出会いから次の活動が生まれ、そこに別の人が加わり、部門や組織を越えて広がっていく。


「共創とはなんでしょうか?」という問いに対しては、会社として目指す方向を共有しながら、一人ひとりが自分の経験に引きつけて語れることが大切だとお答えしました。

「私にとって共創とは、こういうことです」
「こんな経験があったから、共創を大切にしています」

そうした言葉には、その人ならではの説得力があります。外から見ても、「この人と一緒にやってみたい」と思えるようなことが重要だと思います。

共創の場には、普段の仕事では見えにくかった、その人のよさが表れることがあります。だからこそ、初めて参加する人を、経験者や上の立場の人が温かく迎え、応援することが大切なのだと思います。

共創を、誰もが育てていける力に

当日の対話を振り返ると、これからの共創に大切なことが、改めて見えてきました。まず、共創する力を、一人ひとりが育てていけるものとして捉えることです。

そのためには、参加の入口と、その後のプロセスの両方が必要です。イベントで出会った人ともう一度話す。小さく試す。困ったら相談する。そうした積み重ねの中で、関係もアイデアも育っていきます。

そして、それを支えるのが、場と人、継続的な運営です。参加者の意欲に加えて、送り出す上司や職場の理解、受け入れる人の応援があることで、安心して一歩を踏み出せます。

共創する人は、経験を重ねる中で、共創する人になっていく。

最後にこんなメッセージをお伝えしました。
「騙されたと思って、共創してみてください。」

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おわりに

WORK MILLの皆さん、Cueの皆さん、そして会場で一緒に考えてくださった皆さん、本当にありがとうございました。

共創の場をつくる会社が、自らも共創を実践し、その担い手を育てている。その積み重ねに触れられたことは、共創を掲げる大学づくりに関わる私にとって、大きな励みになりました。

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これからも「共創」を大事なキーワードとして、捉えていきたいと改めて思いました。


関連リンク・参考文献

本文で紹介した取り組みや書籍、論文について、詳しくはこちらをご覧ください。

Cue Dream Projectを題材とした論文

今永典秀(2023)「関係人口創出に向けたオンライン環境を活用した共創の場の可能性」『地域活性研究』19巻1号、pp.51–59。
論文全文を読む(J-STAGE・PDF)

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