ノリノリでインターンシップ研究入門(Vol.2):錯綜する日本のインターンシップ ─ 4つの歪みと、その先にあるもの

日本のインターンシップは今、大きなうねりを起こしています。年間で数百万人の学生が参加し、1day から長期実践型まで、形態も実に多様です。ところが、その「広がり」と引き換えに、インターンシップとは何か? 
得体の知れない何かになっているようにも感じます。本記事では、現代日本のインターンシップが抱える「4つの歪み」を整理して提示します。①制度・期間、②目的、③主体、④効果検証
── この4つの歪みによって「インターンシップ」等言葉が、いろんな意味を持ってしまっています。
そんなお話を展開したいと思います。


目次

はじめに ── 第1回目のおさらい

連載第1回では、私自身の20年余りの実践と研究の歩みを記載させていただきました。岐阜大学・名古屋産業大学・コー・イノベーション大学(CoIU)という3つの大学での挑戦、そして「ボンディングシップ」という独自概念に至るまでの道筋を軽く触れました。

その中で、「日本のインターンシップっていったいなんなのだろうか?」と常に問い続けてきました。

「インターンシップ」という言葉が、広く使われているにもかかわらず・・・・

みんなが思うインターンシップがそれぞれ異なるのはなぜでしょうか?
企業が求めるものは何でしょうか?採用でしょうか?
大学が求めるものは何でしょうか?教育でしょうか?
一番大事なはずの学生が求めるのは一体何なのでしょうか?

そして、なぜこのような状況になっているのでしょうか?

第2回では、4つの観点から考えてみます。そして「その先にあるもの」として、次回(第3回)へと繋げたいと思います。


第1部:現状の見取り図 ─ 日本のインターンシップは、今どうなっているのか

日本のインターンシップは、今、大きなうねりを見せていると言えます。

何らかのインターンシップに参加する学生の割合は7割以上と、ほぼ大半の学生がインターンシップに参加します。

形態も、実に多様な状況にあります。

1day(1日完結型)、3〜5日の短期、2週間〜1ヶ月の中期、半年〜1年の長期。
プログラム内容も、会社説明会+座談会のようなものから、経営者の右腕として実際に事業を進めるものまで、さまざまな状況にあります。。

主体も多様です。大企業のインターンシップ、中堅・中小企業のインターンシップ、地域中小企業の長期実践型、NPOのインターンシップ、自治体が主催するインターンシップ、海外でのインターンシップ
──これらのすべてが「インターンシップ」と呼ばれています。

この「広がり」と引き換えに、何かが見えにくくなっているように感じます。

企業は、「インターンシップを実施する」と言っても、何を目的に何を提供すべきか定まらないような気がします。

 大学は、「インターンシップを実施する」と言っても、何を目的に実施し、どのような基準でどう評価すべきか迷っているような気がします。

この混乱の正体を、4つの「歪み」として整理してみたいと思います。


第2部:4つの歪み

① 制度・期間 ──インターンシップの適切な期間は?言葉の混乱

まずは、「インターンシップ」という言葉の中に、期間も中身もまったく違うものが混在していることです。

「インターンシップに行く」と聞いて、皆さんはどんな期間を想像するでしょうか。

1日でしょうか。3日でしょうか。1週間でしょうか。それとも、半年や1年でしょうか。

実は、これに統一された答えはありません。どれが良くて、どれが悪いといってるわけでもありません。それぞれ目的や効果が違うのです。それは、1日と半年で違うのは説明するまでもないでしょう。

ただ、同じ「インターンシップ」という言葉が、1日から1年以上まで、まったく違う期間のプログラムを指して使われています。

現実には、短期(1day〜1週間)が大半を占めている現状があります。1ヶ月以上の長期は、全体のごく一部です。

1dayインターンシップ(今はオープンカンパニーなどと言われます)は、学生にとっては企業を知る貴重な機会ですが、実務に長時間しっかりと関わることは、それは、限られた時間の中では難しいでしょう。

一方で、長期実践型インターンシップは、コーディネーターが存在して、プロジェクトがあらかじめ設計された上で、事前準備や途中のフォローアップもありながら、半年から1年にわたって、例えば、経営者の右腕として実際の事業を進めます。新規事業の立ち上げ、営業の最前線、商品開発の現場 ── 学生は実務の当事者として、責任を持って取り組むことができるものもあります。

さすがに、この2つを、同じ「インターンシップ」という1つの言葉で括ってしまうことに、無理があります。が、それぞれ「インターンシップ」に取り組む人や、参加する人にとっては、同じ「インターンシップ」ということになります。

期間が違えば、目的も、効果も、設計の原則も、まったく異なるからです。

ところが現場では、同じ言葉で語られ続けます。

その結果、誰が困るのでしょうか??

学生は「インターンシップ」という言葉に振り回されてしまう可能性があります。
1day と長期実践型のインターンシップを両方参加したことがないと、それぞれを比較する物差しを持つことができません。 


期間が違うことで、全く異なるものなのに、同じように使われてしまっている・・・
第1の歪みです。

これは、次の「目的の混乱」に直結していきます。


② 目的 ── 採用?教育?企業と大学のせめぎ合い。

インターンシップの「目的」は、当然基幹によって異なるのですが、「採用」と「教育」の間で揺れていることもあげられます。

インターンシップは、そもそも何のためにあるのでしょうか。

「採用」のためでしょうか。「教育」のためでしょうか。

歴史的に見れば、日本におけるインターンシップは元々、教育目的を大原則として展開されてきました。大学と企業が連携し、学生が実務経験を通じて学ぶ場として設計されました。

ところが2010年代頃からは、就職活動と結びつく形で発展してきました。企業にとっては優秀な学生との早期接点、学生にとっては内定獲得に向けた説明会や面接の前段階として ── そんな採用ツールとしての側面が強くなっていきました。

そして、2020年代では・・・

一定の条件を満たすインターンシップについては、「採用」との関連性が明確に認められて、企業にとっても、採用を主目的としながらも学生の人材育成を両立することを目指す形が展開されています。

一部を説明すると、具体的には、3年生以上で、5日間以上の期間で、半分以上に就業体験を含むなどの、基準を満たすプログラムについて、取得した学生情報を採用選考に活用できる、という整理が行われました。

ここでは、この改訂の是非を論じたいわけではありません。事実として、日本のインターンシップ制度が「採用と教育の両方を含むもの」として再定義された、ということを押さえたいのです。

この変化によって、教育機関(大学)の役割も問い直されているということになります。

大学は長らく、インターンシップを「キャリア教育」として位置付けてきました。
学生が実務を経験することで、自己理解を深め、職業観を養い、社会に出る準備をする ── そうした教育的な意味付けが中心となっていて、直接的な採用には繋げないことが一般的でした。

改めて、学生は、何を期待して参加すればいいのでしょうか。

学びの場なのか、選考の場なのか。 自己探索の機会なのか、内定獲得のステップなのか。

採用と教育、両方を1つの言葉で語ろうとして、無理が出ています。

私は著書の『企業のためのインターンシップ実施マニュアル』の中でも、「目的を1つに絞る」ことの重要性を強調してきました。目的を絞ることで、初めてより良いインターンシップが構築できると考えられます。

採用と教育の両立はとても重要なキーワードですが、それぞれ目的が異なります。両方を同時に追いかけようとすると、結局どちらも中途半端になる懸念もあります。

これが、第2の歪みということになります。


③ 主体 ──大企業?中小企業?全然違うのにインターンシップは同じなの?

第3の歪みは、インターンシップが知名度の高い「大企業中心」に行われてしまうリスク・懸念があるということで、本来はいろんな働き方・企業・業種があるが、それが果たして実現できるのか?ということです

新聞やニュースで「インターンシップ」が語られるとき、思い浮かぶのは大企業の名前が大半です。1day や数日間の説明会型インターンシップが、メディアで取り上げられるインターンシップの中心像となっているように捉えられることもあります。

学生にとっては、自分の知ってる企業や、身近な存在の企業の方が、当然のことながら選択肢に入る可能性があります。そしてそのような企業は広告・宣伝なども多く行っている可能性も高く、目に入ることもあるでしょう。

一方で、日本の99%の割合は中小企業が占めてると言われ、さらに、さまざまな業種や働き方が存在し、それらを経験しながら、将来の働き方を考える機会になったり、経験を踏まえて何を学ぶべきか?などを考える機会としたいのですが、それが実現できているか・・・・ということになります。

また、大企業と中小企業では異なる経験ができるでしょう。

例えば、ある中小企業で、半年間にわたって学生が新規事業の立ち上げに関わる。経営者と毎週ミーティングをし、現場の社員と一緒に動き、失敗しながらも責任を持って取り組む ── そういう深い経験が、「長期実践型インターンシップ」では実際に行われています。

さらに、このようなインターンシップには、コーディネーターと呼ばれる人が、伴走支援をするわけですが、そのような人に着目される機会もそれほど多くない可能性があります。

長期実践型インターンシップが機能するためには、コーディネーターの存在が決定的に重要です。学生のモチベーション維持、企業の現場との調整、トラブル対応、リフレクションの設計 ── これらすべてを支えるのが、コーディネーターです。


私自身、大学での実践的な学外の教育活動を通じて、「良いプログラムには、必ず良いコーディネーターがいる」ということ、その必要性について、繰り返し実感してきました。

企業が主催するインターンシップにおいても、特にある程度の期間実施するものについては、メンター的な役割や、学生のフォローの立場で、受入担当者以外に第三者的に支援・フォローするコーディネーター的な役割の人が存在することは重要だと感じています。

企業規模によって、さまざまな人たちが関わりながら、学生にとって最適なインターンシップを実施することが必要です。そのやり方、プログラムの作成方法、関係の仕方などさまざまな点が異なるのですが、これもあまり解明されずに実践されていることについても、歪みが存在していると感じています。


④ 効果検証 ── 何が評価基準なのか?

第4の歪みは、「良いインターンシップとは何か」の基準が曖昧で、効果検証が短期的な指標に偏っていることです。「良いインターンシップ」とは、いったい何でしょうか。

その基準は、誰が決めているのでしょうか。実は、明確な基準は、ありそうでありません。

多くの企業や大学で「効果」として測られているのは、「内定獲得率」や「参加学生の満足度」といった、短期的で表面的な指標です。

確かに、これらは測りやすい指標です。しかし、本当の意味でインターンシップが効果を発揮したかどうかは、もっと長期的な視点で見る必要があります。

学生は本当に成長したのか。 企業は本当に変わったのか。 入社後5年、10年経って、どう影響しているのか。定着・活躍してるのか。企業の立場では定着が正しいと思いますが、大学の立場であれば、学生が幸せに活躍してるのか。時に転職しても自分らしく働いていること、幸せに過ごしていることが重要かも知れません。

こうした問いに対して、ほとんどのインターンシップは答えられません。インターンシップを経た後の、追跡調査が十分になされていないからです。その背景にはいろんな事情もあると思いますし、追跡調査がないわけではなくて、いろんな試みがされていますが、多様なインターンシップや、この時代・状況の変化に対応できているわけでもなさそうなイメージを持っています。

学生は「いい経験になった」と感じて終わる。
企業は「優秀な学生に出会えた」と感じて終わる。
大学は「単位を出せた」と感じて終わる。

それぞれ満足しているように見えますが、本当の意味での教育効果や、企業の変容、地域への影響まで考えると、検証は不十分かも知れません。

何を測ればいいのでしょうか。それは、1−3の歪みとも関連しますが、目的・期間・対象によって異なるのです。そう、かなり千差万別なものの中で、当然異なる結果が出るのですが、そこまで解明されていないのが現状だと思われます(かなりの蓄積が存在することも事実です)

例えば、対象によって、こんな一例があげられる気がします。

学生の成長(リーダーシップの発揮、自己効力感の向上、キャリア観の深化)。
企業の変容(受け入れによる組織の学び、新しい視点の獲得、社員の成長)。
地域への影響(人材の循環、地域企業のネットワーク形成、若者の地域定着)。

基準が曖昧であれば、効果は見えません。効果が見えなければ、改善もできません。改善できなければ、「やった気になる」プログラムが繰り返されるだけです。

これが、第4の歪みです。


第3部:その先にあるもの 

ここまで、4つの歪みを見てきました。
①制度・期間 ②目的 ③主体 ④効果検証

注意深く見ると、「インターンシップ」という言葉の中に、あまりにも違うものが混ざっている、ということです。

期間が違うものが混ざっている(歪み①)。
目的が違うものが混ざっている(歪み②)。
主体が違うものが混ざっている(歪み③)。
だから、効果の測り方も定まらない(歪み④)。

整理されていない言葉で、整理されていない現実を語ろうとしている。
だから、混乱が生まれるということになります。

多くの企業のケースを見ると、目的と、期間や効果測定が異なってるように感じることが多くあります。

まず、整理してみることが重要ということになります

「インターンシップ」という大きな1つの言葉を分解し、何と何が違うのかを明確にすること。それぞれに別の名前を与えるか、少なくとも「これは○○型のインターンシップだ」と区別して語ること。アルバイトやボランティアと、このインターンシップはどのように違うのか?似てるのか。

まずは、「期間」と「目的」の2つの軸が、わかりやすくインターンシップを整理するための基本的な物差しだと考えています。

次回、第3回では、この「期間」と「目的」の2軸を使って、日本のインターンシップを丁寧に整理していきます。

そして第4回で、その整理の先に見えてくる「長期実践型インターンシップ」の必要性について、示していきたいと思います。


おわりに

第2回では、日本のインターンシップが抱える「4つの歪み」を整理して提示しました。

歪みを指摘すること自体が目的ではありません。歪みの根を見極めることで、その先にある「整理」と「核心」へと進むために必要だと考えています。

次回(第3回)は、「インターンシップを理解する ─ 期間と目的の2軸で読み解く」です。

ぜひ、引き続きお付き合いください。

この記事は、noteでも公開しています。


【連載回】

【関連リンク】

  • 今永典秀のnote ページ
  • 関連書籍:『企業のためのインターンシップ実施マニュアル』(日本能率協会マネジメントセンター, 2021)
  • 関連書籍:『長期実践型インターンシップ入門』(ミネルヴァ書房, 2024・編著)
  • 関連論文:「行政が支援する中小企業向けインターンシップ・プログラムの改善に関する研究」(地域活性研究, 2023, 査読付)
  • お問い合わせ

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