このたび、日本実務教育学会より2026年度「研究委員会特別賞」をいただきました。
今は、大学経験が10年以上経過しましたが、元々は、私自身、銀行・不動産会社での約10 年の実務経験を経て大学教員に転じた「実務家教員」の一人でもあります。文部科学省の示す大学の実務家教員は、おおむね5年以上実務経験を有する教員ということになっています。
日本実務教育学会では、研究委員長として、表彰制度を立ち上げ、運営しています。
研究では、実務家教員がこれからの大学で果たす重要な役割を明らかにしたいと考えています。
そして現在は、コー・イノベーション大学(CoIU)で教授と事務局長を兼務し、
「教職協働」を自ら体現する働き方に挑戦しています。

1. 受賞のご報告
日本実務教育学会は、実務教育・実務家教員に関する研究と実践の発展を目的とする学会です。
私は2025年6月より副会長・研究委員会の委員長を務めており、このたび研究委員会より「研究委員会特別賞」をいただきました(運営側にもいるので、この賞をもらうのが良いのか悩みましたが、推薦いただいた方もいらっしゃり、公平なプロセスで選定いただいたので御受け取りさせていただくことにしました。ありがとうございました)
学会で共に活動してくださっている会員の皆さま、日頃から議論を重ねてくださる先生方に、心より感謝申し上げます。
この受賞を機に、私が実務家教員として取り組んでいる3つ――実践、研究、大学現場での働き方――を、あらためて言葉にしてお伝えしたいと思います。

2. 私=実践者:「実務家教員」である
私自身が「実務家教員」であります。今は確かに大学で働く期間が半分を超えてきましたが、いわゆる大学の教員・職員プロパーではなく、それ以外の社会で働いた経験を有する外部のもので「も」あるということです。
大学卒業後、住友信託銀行で6年半、東和不動産で4年、合わせて11年ほど実務の世界で働きました。働きながらグロービス経営大学院で学び、岐阜大学で教育・研究の道に入り、大学教員になってから博士(工学)を取得。名古屋産業大学の経営専門職学科の立ち上げ・運営を経て、現在はコー・イノベーション大学(CoIU)で、教員と事務局長を兼務させていただいています。
実務から教育・研究への越境は、私にとって大きな挑戦でした。実務経験は財産ですが、経験を語るだけではいけないことが入ってわかりました。経験を理論と往還させ、検証可能な知に変えていく――この「実践と研究の往還」が、実務家教員としての私の軸になるものです。
3. 学会での実践:表彰制度を立ち上げ、運営する
1つめは、学会における表彰制度の立ち上げと運営です。
私のミッションは「頑張る人が報われる世の中をつくる」こと。実務教育の世界には、教育現場で、企業で、地域で、素晴らしい実践と研究を積み重ねている方がたくさんいます。しかし、その頑張りが光を浴びる機会は、決して多くありません。実践は論文になりにくく、論文にならない貢献は評価されにくい面もあります。大学に入って間もないことに感じたギャップの存在、実務と学術の間に立つ実務家教員だからこそ、この構造的な課題が見えます。
だからこそ、学会として優れた実践・研究・貢献を顕彰する表彰制度を立ち上げ、その運営に取り組んできました。誰かの頑張りに学会として光を当てることは、本人の励みになるだけでなく、「実務教育とは何か」「何を優れた実践と呼ぶのか」を学会として言語化する営みであると考えています。
また「表彰制度」は、私の研究テーマの一つでもあります。地域中小企業の若手人材を表彰する「ルーキー・オブ・ザ・イヤー in LOCAL」の研究では、表彰という仕組みが人の挑戦を可視化し、地域の共創を生み出すメカニズムを分析してきました。また、「東海学生Award」の取り組みは東海地区で頑張る若手・学生が数多く登壇し、その仕組みがどうなっているか、どんな波及効果があるかという点も研究対象として捉えています。
学会での表彰制度の実践もまた、私にとっては「実践と研究の往還」の一部です。
4. 研究:実務家教員の重要性を明らかにしたい
2つめは、研究です。私は、実務家教員がこれからの大学において非常に重要な役割を果たすことについて、「大きな声で叫ぶ」ことではなくて、研究を通して明らかにしたいと考えています。
社会の変化が速く、リカレント教育や産学連携が大学の中心的なテーマになる時代。理論と実践の橋渡しができる実務家教員の存在は、大学教育の質を左右する鍵になります。しかし、「実務家教員」の実像は、実は十分に明らかになっていません。どんな経歴の人が、どんな学位を持ち、どんなキャリアを歩んでいるのか。育成の道筋や評価の物差し、昇進のモデルは確立されているのか。
現在、専門職大学の専任教員を対象とした調査など、実務家教員の実態をデータで可視化する研究に取り組んでいます。(科研費基盤Cの研究分担者として、専門職大学出身の他大学の先生とチームで取り組んでいます)
どんな教員が採用されて、どんな風に活躍していくのか?どんなキャリアを歩んでいくのか?
実務家教員の実態を明らかにすることは、「頑張る実務家教員が報われる」大学の仕組みをつくるための土台づくりだと考えています。
5. CoIUでの挑戦:教員×事務局長という「教職協働」の体現
3つめは、私自身の大学現場での働き方そのものです。
現在、CoIUで共創学部の教授として教育・研究を行いながら、大学全体の運営を担う事務局長を兼務しています。
「教員」と「職員」の仕事を一人で担う――これは、従来の大学ではあまり見られない働き方かもしれません。
大学業界では長らく、教育・研究を担う「教員」と、運営を担う「職員」の間に見えない壁があると言われてきました。その壁を越えて協働する「教職協働」の重要性は、以前から指摘され続けています。
私はいま、その教職協働を、兼務というかたちで体現したいと考えています。
もちろん学校法人・大学の立ち上がりのタイミングで非常にハードな内容が多いのですが、
さまざまな状況に触れて、そこから学び、形にしていきたいと考えています。
教員として学生や地域と向き合うからこそ、大学運営で何を優先すべきかが分かる。
事務局長として制度やさまざまな反応がわかるからこそ、仕組みに落とし込むこと、改善することができる。
2つの立場を往復することは簡単ではありませんが、開学したばかりの新しい大学だからこそ、
教育と運営を一体でつくっていく面白さがあります。
そしてこれは、私が研究してきた「越境」や「パラレルキャリア」の実践にもつながってきます。
所属や役割の境界を越えて働くことが当たり前になる時代に、大学で働く人のキャリアもまた、新しいモデルが求められている。教員×事務局長という働き方が、その一つの選択肢になれば――そんな思いで、日々試行錯誤しています。そして、今までのキャリアにおいて、学んだこと、実践してきたことを総合格闘技のように使いこなすことが求められ、刺激的な毎日を楽しく過ごしております。
6. おわりに
これから実務家教員を目指す方、実務家教員の採用・育成に取り組む大学関係者の方、教職協働に関心のある方。ぜひ一緒に、新しい大学の働き方・キャリアをつくっていきましょう。
#日本実務教育学会 #実務家教員 #教職協働 #専門職大学 #受賞報告 #実践と研究の往還 #大学職員 #キャリア
