前回(第2回)で示した「4つの歪み」は、いずれもインターンシップが千差万別で、それおぞれが思うインターンシップが異なっていることをお伝えしました。本記事では、その混乱を整理する物差しとして、「期間」と「目的」の2軸を提示します。期間軸は短期(1day〜1週間)/中期(2週間〜1ヶ月)/長期(3ヶ月〜)の3区分です。目的軸は採用目的/教育目的/体験目的の3区分です。そして第3部では、この2軸の整理では捉えきれないコーディネーターが存在する「長期実践型インターンシップ」を紹介します。次回(第4回)では、その長期実践型インターンシップがなぜ必要なのかを、実践事例と研究の観点からお示したいと思います。
はじめに
第2回では、日本のインターンシップが抱える「4つの歪み」を整理しました。
①制度・期間、②目的、③主体、④効果検証
同じ「インターンシップ」という言葉でも、それぞれの組み合わせによって多様なものであり、それぞれが感じるインターンシップが異なるものであるということです。
第3回では、その混乱を整理する物差しを、お示ししたいと思います。
インターンシップを整理する基本軸として、「期間」と「目的」で区分するとわかりやすいと思います。
このインターンシップの期間はどれくらいなのか?
何を目的としたインターンシップなのだろうか?
この2つを丁寧に分けて見ることで、「インターンシップ」という1つの言葉の持つ実態としての中身が、見えやすくなります。
ただし、今回は学生のインターンシップに絞って整理します。社会人を対象とした話などは、別の回で改めて扱います。
そして、この2軸では捉えきれないものとして、長期実践型インターンシップです。第3部でその概要をお伝えします。ここでは、大学が主催するものや、企業間で連携したものなどは一旦除外してシンプルに、企業が主催するインターンシップについてお伝えしたいと思います。
第1部:期間軸で見る
まずは「期間」の違いについて見ていきます。当然ですが、1日と1ヶ月ではその内容は異なることが理解できるでしょう。ただし、これらが混在して捉えられていることが多く見受けられます。
インターンシップを、短期(1day〜1週間)、中期(2週間〜1ヶ月)、長期(3ヶ月〜)の3つに整理します。

1.短期(1day〜1週間)
事例:1day形式の会社説明会型プログラム、3〜5日のグループワーク型プログラム、1週間の業界研究型プログラムなど。多くは大企業が大学3年生を対象に夏期や冬期に実施します。採用を目指したものや、低学年次向けに導入的な意味で行うもの、企業の社会貢献活動の色濃く行うもの、大学と連携して行うものなのが中心的なイメージで良いと思います。
効果:学生にとっては、複数の企業や業界を比較検討できる効率の良さがあります。短期間で多くの情報を得られ、自分が何に関心があるか、少し向いてないものが何かな?といった、自己分析の起点になります。企業にとっては、自社の認知拡大と将来の採用に向けた母集団形成に有効です。
課題:当然期間が短いことから、実務に深く関わる時間は短くなります。学生の成長や企業文化の理解は限定的になります。「インターンシップに行った」という事実は残りますが、実際の中身は会社説明会や座談会に近いというリスクも存在します。したがって、本来の意味での「就業体験」とは距離がある可能性が高いです。「やった気になる」インターンシップが生まれやすいのに留意は必要です。
2.中期(2週間〜1ヶ月)
事例:夏休みや春休みを利用した2週間のプロジェクト型プログラム、1ヶ月程度で、特定の部署の業務を実施するプログラムなどがあげられます。
効果:短期と比べて、職場の雰囲気を体感し、業務の一部を実際に担当できる時間があります。学生は「働く」という具体的な感覚を得やすく、自己理解・企業理解も深まります。企業にとっても、学生の人柄や能力を、結果として一定程度把握できることになります。
課題:プログラム設計の力量が問われることになります。丸投げ放置をしてしまうと、学生からの評価は一気に下がってしまいます。また、学生を過度に「お客様扱い」をすると、楽しそうだけど何も成長しなかったなど、深い学びに到達しません。一方で、責任ある業務を任せるためには、企業側で体制の準備をしっかりと行う必要があります。つまり、現場と人事の連携が必要になります。意外とあっという間に終わってしまうので、(どの期間でも同じではありますが、より一層)来る学生に合わせて、しっかりとプログラムを濃密な内容に設計する必要があります。
3.長期(3ヶ月〜)
事例:3ヶ月以上の部署配属型インターンシップ、半年の課題解決型プロジェクト、1年間の有償ジョブ型インターンシップなどになります。
効果:実務の当事者として、責任を持って業務に取り組む経験が得られます。学生の成長は短期・中期と比べて質的に大きく、企業側にとっても、学生が組織に与える影響(新しい視点、業務改善、若手育成のきっかけ)が見え始めることが特徴です。
課題:長期になるほど、学生・企業にとって負荷が高くなります。学生は学業との両立、企業は受け入れ体制の整備が求められます。また、単に期間を長期にすれば自動的に効果が出るわけではなく、行き当たりばったりではダメで、しっかりと設計し、目的をすり合わせ、学生の状況に応じてカスタマイズすることや、メンター的な人が支援するなど、伴走支援の質が決定的に効いてきます。企業側が、若者と「共創」することができるのか?ということが問われることになります。
期間軸から見えてくること
期間軸で見ると、期間が長くなるほど、企業での体験が本物に近くなり、より一層プロジェクトの内容と伴走の重要性が増すことになります。短期間では、限られた時間の中でできることが限定されるので、その点を理解しなければいけないということになります。3日と5日では、それほど中身が変わらないということも理解いただけると良いと思います。
企業の皆さんも学生も、自分たちのインターンシップが何を目指すべきか、見え方が変わって来ることが理解できたら良いと思います。
次に、この期間に加えて、「目的」について考えて見ましょう。
第2部:目的軸で見る
次に、「目的」で分けると、採用目的、教育目的、体験目的の3つに整理できます。

第2回で取り上げた「目的の歪み」は、まさにこの3つが企業側の現場で混在し、誰も区別しないまま「インターンシップ」と呼んでいることが多くの原因だと考えています。
当然、全て満たせれば良いのでしょうが、それぞれ異なるもので、両立させるのは難しいのではないでしょうか。
それでは、1つずつ見ていきましょう。
1.採用目的
事例:企業の人材獲得を主目的としたインターンシップです。近年では、5日間以上の就業体験を含む一定基準を満たすプログラムについて、「インターンシップ」という名称で実施することができるようになりました。それ以外は「オープンカンパニー、キャリア教育」という名称で実施することになります。インターンシップのインセンティブとして、取得した学生情報を、採用開始時期以降に活用でき、採用に繋げるインセンティブが認められました。
効果:企業にとっては、選考の前段階に学生と接触することができ、企業の就業体験を経て、自社に合う学生との効率的な出会いが可能となります。また、学生の人柄・能力などを現場で見ることもできます。学生にとっても、就職活動の一環として、自分の将来に対して合致する企業なのか、またネット情報などではわからない雰囲気などがわかる可能性があります。
課題:採用目的が前面に出すぎると、「選考の場」となり、学生も選考モードになるため、素の自分を出しにくくなります。本来あったはずの「学び」「自己探索」の側面が後退する懸念があります。ビジネスと教育は対極にあると考えられがちです。事業性と社会性という言葉だと理解しやすいかもしれませんが、両立が困難な局面もあり得るということになります。
教育目的
事例:キャリア教育の要素・職業観養成を主目的としたインターンシップです。大学が実施する単位認定型のプログラム、専門職大学の臨地実務実習、ゼミ・研究室主導のフィールドワーク型プログラムなどがイメージしやすいと思います。企業が主催するものでも、採用活動の流れに乗せずに、明確に「学生にとって、学びがある」内容として実施するものが該当します。
効果:例えば、参加する学生は「働くとは何か」を体系的に学び、自己理解とキャリア観を育てる機会が得られます。インターンシップの要素として「自己理解」「将来のキャリア形成に向けた機会」などが含まれていることが本来的なものだと思いますが、まさにこの部分の効果が得られることになります。
課題:教育目的が強くなりすぎると、企業側からすると時に負担が大きかったり、教育が本来の業務ではないことから、実施に向けたノウハウが存在しないなどのリスクがあります。企業側のメリットや、目的、長期的な観点でどのような影響があるかを事前に考えておかないと、短期的には成果が見えにくいことも留意する点です。
体験目的
事例:業界・職種理解、自己理解の促進を主目的としたインターンシップです。明確な採用意図はなく、教育目的も一部入っていますが、それよりは少しライトな形で企業の理解や、職業の簡単な体験、導入に重点を置いたプログラム。1day見学型や、業界横断型のプログラムなどが含まれます。
効果:学生は気軽に多様な現場に触れられ、自分の興味・関心を広げられます。企業にとっては、学生との緩やかな接点を持ち、認知度を高める機会になります。長期間の教育目的の内容と比べて企業の負担が小さいことも特徴です。
課題:「体験して終わる」だけだと、学生の中に深い学びとして残りにくいです。「やった気になる」インターンシップが、この目的に最も該当しやすい領域です。事前・事後に何を行うか。何を持ち帰ってほしいのか、そのために必要なエッセンスは何かと事前に考えないと、単なる工場見学・社会見学、話を聞いておしまいになってしまうリスクがあります。
目的軸から見えてくること
目的軸で見ると、3つの目的はそれぞれ違う設計の論理を持っていることが分かります。採用目的なら採用に最適化された設計、教育目的なら教育に最適化された設計、体験目的なら体験に最適化された設計。
ところが現実には、1つのプログラムに3つの目的が中途半端に混ざっているケースが少なくありません。「採用にも繋がるし、教育にもなるし、体験にもなる」と謳ったプログラムが、結局どれも中途半端に終わってしまいます。
そして、インターンシップという以上は「教育目的」を少なくとも満たしていた上で、その上で、どの程度「採用」に傾斜しているかというようなことを検討できると、学生にとって良いものになるのではないでしょうか。
そして、目的と期間(内容)が不一致なプログラムが、私から見ると非常に多く散見されるというのも、日本のインターンシップの状況ではないかと思います。
第3部: 長期実践型インターンシップ
ここまで、期間と目的の2軸で、学生のインターンシップを整理してきました。
期間軸(短期・中期・長期)と目的軸(採用・教育・体験)。この2軸を組み合わせると、9つのパターンの整理ができます。多くの学生インターンシップは、この9パターンのどこかに位置づけることができます。

良いインターンシップとは何か?ということを考える上で欠かせないのは、コーディネーターが伴走支援する「長期実践型インターンシップ」が、存在します。
「長期×教育目的のインターンシップ」と言ってしまえば、形式的には分類できそうに見えますが、本質は、それでは語り尽くせません。
インターンシップは、単に期間を長くすれば自動的によくなるものではなく、目的を教育に絞れば自動的になるものでもないからです。
教育目的を基盤として、企業の事業価値(企業のメリット)を実現する。つまり両立させることです。ただし、働いたことがない若者に本当にその役割を担えるのか?という疑問があると思います。
3つの特徴について触れたいと思います。
1.専属のコーディネーターによる伴走支援です。学生と企業双方(時には大学)に対して、事前、実施中、事後にきめ細やかなフォローを行います。
2.結果として、学生は、実務の当事者としての関与です。お客様扱いではなく、責任を持って事業の一部を担う。学生が経営者の右腕として働き、失敗も成功も含めて、貴重な実践経験を得ることができます。
3.その結果、企業にとっては、経営者・現場社員と学生の深い関係性が生まれます。半年〜1年という期間は、単に時間が長いという意味ではなく、信頼関係が育つために必要な時間です。学生と企業の間に「信頼関係・絆」が生まれることになります。
結果、インターンシップは質的に異なるものになると考えられます。
期間が長いだけのインターンシップではない。教育目的のインターンシップでもない。採用目的のインターンシップでもない。期間と目的の2軸では捉えきれない、両立するものを目指すことが重要だと考えられます。
なぜ、わざわざ手間のかかる長期実践型を、企業も大学も学生もコーディネーターも、こんなに本気で取り組むのか。
次の第4回で、「なぜ『長期実践型インターンシップ』が必要なのか 」で、丁寧にお伝えしたいと思います。
おわりに
第3回では、期間と目的の2軸でインターンシップを整理し、長期実践型インターンシップを紹介しました。
学生のみなさんが「インターンシップに行く」と言うとき、それがどの期間で、どの目的かを意識するだけで、得られるものは大きく変わります。
企業のみなさんが「インターンシップを実施する」と決めるとき、主な目的を1つに絞り、合致する期間や内容を検討することで、設計が定まります。
この記事は、noteでも公開しています。
【連載回】
- Vol.1:連載スタート
- Vol.2:錯綜する日本のインターンシップ ─ 4つの歪みと、その先にあるもの
- Vol.3:インターンシップを理解する ─ 期間と目的の2軸で読み解く(本記事)
- Vol.4 (近日公開予定)
【関連リンク】
- 関連書籍:『長期実践型インターンシップ入門』(ミネルヴァ書房, 2024・編著)
- 関連書籍:『企業のためのインターンシップ実施マニュアル』(日本能率協会マネジメントセンター, 2021)
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