2025年11月1日、仙台市にて開催された宮城県主催「ものづくりカレッジプロジェクト 学生と考える産学連携ワークショップ」にて、基調講演とパネルディスカッションのファシリテーターを務めました。
テーマは「学生と企業の共創 ─ 地域にとって良いインターンシップとは」です。
東北・宮城・仙台の地で、これからの時代を担う学生と地域企業の皆様に向けて、長期実践型インターンシップ研究の知見と、私自身の実践経験から見えてきた「共創時代の人材育成」について、お話しする貴重な機会となりました。
ワークショップの全体像
「ものづくりカレッジプロジェクト」は、宮城県内のものづくり企業と県内外の学生が出会い、互いに学び合いながら、地域の未来を共に考える取り組みです。
当日は2部構成で、基調講演ののちに、学生・企業・大学・支援機関の皆様による対話型のワークショップが行われました。それぞれの立場から、就職活動・インターンシップ・キャリア形成についての本音と課題、そして宮城県という地域ならではの議論が展開されました。
基調講演:学生と企業の共創 ─ 地域にとって良いインターンシップとは
基調講演では、「学生と企業の共創」という観点から、地域にとって良いインターンシップとは何か、その本質と実現の道筋についてお話ししました。
5つの問いから始める
講演の冒頭で、参加者の皆様と一緒に考えたい以下の5つの問いを提示しました。
1つ目は、「地域で活躍する人材を共に育成し、企業も学生も成長する『共創』のためには何が必要なのか?(逆に、何がいけないのか?)」という問いです。
2つ目は、「良いインターンシップとはどのようなものか?(あるいは、意味のないインターンシップとは何か?)」という問いです。
3つ目は、「『共創』時代の人材育成において、『競争』から『共創』へのシフトの中で、学生・大学・企業・自治体など、それぞれの人たちが何をすべきか?(何をしてはいけないのか?)」という問いです。
4つ目は、「実務家教員・越境・コーディネーターの役割が、これからますます重要になる」ということです。
5つ目は、「答えのない時代において、すべての人が自ら学び続けることの重要性」、特に「探究的な学び」「内省」「リフレクション」の意義です。
これらの問いは、それぞれ独立しているようで、実は一本の糸で繋がっています。「共創」というキーワードのもと、企業・学生・地域がそれぞれ何をすべきかを考えていく時、どこから手をつけるかは違っても、最終的には同じ方向を向いている、と私は考えています。
インターンシップの普及と現状
講演ではまず、日本のインターンシップの歴史と現状を概観しました。日本でインターンシップが大学のキャリア教育の一環として流行し始めたのは2000年頃。2014年頃には大学内で広く市民権を得て、約7割の大学が導入する状況になりました。2017年から2020年にかけては、就職サイトとスマートフォンを通じた接点の拡大により、ワンデイ型インターンシップが急速に広がりました。
そして2025年現在、学生にとってインターンシップへの参加は当たり前のものになっています。参加率は7割以上、何らかのインターンシップを経験する学生は9割近くに達し、平均参加社数は5〜6社です。一方で、採用と直結する大手企業のインターンシップに学生が集中する傾向もあり、地域中小企業は埋没しがちな状況になっています。
1Day型インターンシップの限界
1Day型のインターンシップは、業界・仕事内容を「認知する」目的では一定の効果がありますが、それは動画視聴や説明会、面談でも代替可能です。私自身の研究と実践の知見からは、1Day型インターンシップの参加経験を通じてキャリア形成の進捗が認められた学生はわずかで、関係人口的な接点が継続的に維持されたケースはさらに少なくなります。
1日という短い時間で、学びと魅力伝達を濃縮するのは極めて難易度の高い設計です。
現実的には、3〜5日以上のプログラムから、深い学びと関係性の構築が始まります。
さらに長期間になることで、インターンシップらしい学び・実践が生まれると考えています。
良いインターンシップの核:三位一体
それでは、「良いインターンシップ」とはどのようなものなのか。
私は、その核に「自己理解」「将来のキャリア」「就業体験」の三位一体があると考えています。
学生は、就業体験を通じて自己理解を深め、自己理解を通じて将来のキャリアを考える。この三つが循環することで、単なる「業界の認知」を超えた、本質的な学びと成長が生まれます。
そして、地域中小企業にとってのインターンシップは、「人を採るための活動」であると同時に、それ以上に、「事業を共に進める若い力との出会いの場」であり、「自社が外部からどう見えるかを知る機会」でもあります。
学生にとっても、地域中小企業との関わりは、教科書では学べない実践知を獲得する場となります。
この双方向の学びと成長を生み出す場づくりこそが、「共創インターンシップ」の本質です。
設計の5原則
私の研究と実践から見えてきた「魅力的なインターンシップ・プログラム」の設計原則は、5つあります。
第1原則は、事前・中間・事後の学習フレームを設計することです。事前で目標設定、中間でレビュー、事後でリフレクションという3つのフェーズを通じて、学生の自己理解・目標設定・実践・内省・対話を充足させます。
第2原則は、難易度を「少し背伸び」に設定することです。難しすぎれば学生は離脱しますし、簡単すぎればアルバイト同然と捉えられて軽視されます。現状の能力より一段上の課題に挑戦できる設計が、最大の学びを生みます。
第3原則は、フィードバックを「コーチング型」にすることです。「あなたはここがダメ」とレッテルを貼る伝え方ではなく、「次の改善観点はここにある」と次の挑戦を促すコーチング型のフィードバックが、学生の継続的な成長を支えます。
第4原則は、若手とベテランの混成チームでジェネレーションギャップを橋渡しすることです。社長一人による独演型のインターンシップは、双方向性を欠きやすい。世代の異なる複数の社員が学生と関わることで、世代を越えた相互理解が生まれます。
第5原則は、内省を共通言語にした対話を、企業文化として根付かせることです。「経験そのもの」ではなく、「経験を振り返り意味づける対話」こそが、学びを学びとして定着させます。
段階的関係構築
特に強調したのは、段階的関係構築の重要性です。インターンシップ体験直後の即勧誘・即採用は、ミスマッチの最大の原因になります。
短期間のインターンシップが終わった直後に「うちに来ない?」と勧誘するのは、仮にOKだとしても、入社後のミスマッチや早期離職に繋がりやすい。
理想的な関係構築は、「短期間の体験 → 再訪・継続 → ファン化」という段階を経るプロセスです。すぐに採用に結びつけるのではなく、まずは関係性を作り、ファンになってもらい、その先に「やはりこの会社で働きたい」という強い意思が育つ。これが、本当の意味でのマッチングの姿だと考えています。
採用スタイルの転換:大量母集団から関係人口へ
このような考え方は、採用スタイルそのものの転換を意味します。
これまでの「大量母集団→選抜型」採用は、応募数を最大化することが目的でしたが、こうした採用では学生は本音を出しにくく、結果として早期離職に繋がるケースが多くなります。これからは、「関係構築・質重視」の採用へ。仮に応募が3人であっても、合う3人がいれば3人を採るという考え方です。
採用のKPIも、「母集団の量」ではなく、「リピート率」「ファン化率」「関係人口の増加」へと再設計する必要があります。
このような転換は、単一企業だけでは困難です。だからこそ、産学連携・企業横断の取り組み、つまり「地域の人事部」的な枠組みが、これから5〜10年スパンで地域に好循環を作っていくのです。
長期インターンシップの可能性
講演では、長期実践型インターンシップの実例として、私が立ち上げた名古屋産業大学・経営専門職学科の事例(600時間以上のインターンシップを必修化、週3日×1年+週2日のオンライン授業を組み合わせて理論・対話・実践を統合)、また愛知県の中小製造業による事例(半年以上の長期インターンシップを17名受け入れ、直接採用に繋がらなくとも、良質な応募の増加、クラウドファンディングや補助金の採択など、内容起点で集客力と採用力が向上した)などをご紹介しました。
長期インターンシップは、企業にとっては事業性のあるプロジェクトを学生と共に進める機会、学生にとっては顕著な成長の機会となります。そこで重要なのが、伴走支援者であるコーディネーターの設計と助言です。
実務家教員・越境・コーディネーターの重要性
「共創」を支える人材として、講演では「実務家教員」「越境者」「コーディネーター」の3つの存在を重視しました。
実務家教員は、ビジネスの現場経験を持ちながら大学で教える存在です。私自身も、銀行員時代の経営者支援、不動産業での経営企画・まちづくりの経験を、現在の研究と教育の中で生かしています。実務家教員は、座学と実践を往還する教育の架け橋として機能します。
越境者は、組織や地域の境界を越えて活動する人々です。副業・兼業・プロボノなど、組織の境界を越えた働き方が一般化する中で、越境者は新しい価値や視点を企業や地域にもたらします。
同時に、越境者を受け入れる側もまた学びを得る「被越境学習」の意義も、近年注目されています。
コーディネーターは、学生・企業・地域・大学を繋ぐ専門人材です。長期実践型インターンシップが成果を出すためには、コーディネーターの存在が不可欠です。学生のモチベーションを引き出し、企業の現場を深く理解し、両者の間で生まれる摩擦や葛藤を建設的な学びに変える、高度な専門性が求められます。
これら3つの存在こそが、これからの時代の地域社会に欠かせない人材です。
大人と学生のコミュニケーションの再設計
講演の最後で強調したのは、若者への不満の多くは、実は大人側のキャッチアップ不足が原因であるということです。デジタルツールへの理解、新しい教育環境への対応、世代の異なる若者への向き合い方など、大人側がアップデートする必要があります。
そして、その対話のベースとなるのが、内省を共通言語にした対話です。経験そのものから学びを得るためには、その経験を振り返り、意味づけ、次の行動に活かす姿勢が、大人にも、学生にも、共に求められます。
私が共著で執筆した『共創の強化書』(中央経済社, 2023年)も、まさにこの「学び成長し続ける自分の作り方」をテーマにしています。
学生が知りたいこと、企業が伝えたいこと
学生の皆さんから出てきた声は、極めて率直なものでした。「機会へのアクセスに格差を感じる」「明るい雰囲気や、季節ごとのイベント、社員の趣味公開といった、人としての姿が見える情報に魅力を感じる」「人間関係や福利厚生、成長支援制度を重視する」など、企業選びの実際の判断軸が浮き彫りになりました。
一方で企業側からは、職場環境・事業内容・福利厚生・設備・業界の立ち位置など、多面的に魅力を発信していることが共有されました。しかし、学生が知りたいのは「自分のやりたいことの発見」「職務内容」「職場環境」といった、より個人的な視点です。このギャップを埋めるためには、見学型・体験型インターンシップの拡充が有効だという議論に至りました。
宮城県の地域性とUターン
宮城県ならではの議論として、県内外就職とUターンに関する対話も活発に行われました。
県外就職を志向する理由として、新しい場所・人との出会い・自分自身の発見が挙げられました。一方、県内就職を選ぶ理由として、実家との近接性、生活コストの低さが挙げられます。そして、「一度県外に出たけれど戻りたい」と考える人の理由として、都市部での生活コストの高さ、人間関係の不調などが挙げられました。
宮城県という地域は、産学連携しやすい環境や東北大学を中心とした大学資源が強みです。県外就職を選んだ人材も、副業・兼業として県内の仕事に関わるという選択肢もあります。県内・県外を二者択一で考えるのではなく、地域との関わり方を多層的に設計する視点が重要です。
「立場の違いを前提に、その上で重なりを探り、お互いの手法・接し方を工夫していくことが重要です。時代に応じた制度の変化と、相互の歩み寄りが、人材の定着と地域の人気に繋がります。新しい挑戦は、共創の姿勢が鍵を握ります。」
学生・企業・大学・支援機関、それぞれが立場と論理を持っています。その違いを「埋めるべき溝」として捉えるのではなく、「立場の違いを前提に、その上で重なりを探していく」という姿勢こそが、共創の出発点だと考えています。
おわりに ─ 5年後・10年後への種まき
ワークショップの締めくくりに、参加者の皆様に次のメッセージをお伝えしました。
「東北・宮城・仙台の地域にお招きいただき、ありがとうございます。人材育成、地域活性化、企業の成長は一瞬では変わりません。長い時間コツコツと継続して初めて形になります。そう、この成果が出るのは5年後10年後かもしれません。ただし、何も行わなければ、それで一瞬でおしまいです。今日このご縁が数年後まで続くことを、心より祈っております。」
これは、私自身が実務家教員として、地域中小企業との長期実践型インターンシップの実践を10年以上続けてきた中で、何度も実感してきたことです。今すぐの成果を求める短期的な視点ではなく、地域に根を張り、関係性を編み続け、5年後・10年後を見据えた種まきこそが、本当の意味での「共創」を実現します。
宮城県・東北地方、そして全国各地で、地域が育つインターンシップの実践がさらに広がっていくことを願っています。今後も研究と実践の両軸で、各地の取り組みに関わらせていただければと思います。
ご招聘くださった宮城県ご担当者の皆様、関係者の皆様、そして当日ご参加くださった学生・企業・支援機関の皆様に、改めて深く感謝申し上げます。
【関連リンク】
・長期実践型インターンシップ
・共創の場
・関連書籍:『長期実践型インターンシップ入門』(ミネルヴァ書房, 2024年)、『共創の強化書』(中央経済社, 2023年) ・お問い合わせ

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