第4回では、期間と目的では分類されない第3の存在「長期実践型インターンシップ」を取り上げます。20年余りの実践と研究の観点から示します。中核となるのは、東海地域における長期実践型インターンシップの実践者のG-netの取り組みや、全国のチャレンジ・コミュニティ・プロジェクトの運営母体のETIC.などの取り組みです。私はこの取り組みの中で、たくさんの学生が受け入れられ、活躍する人が生まれ、企業が変わり、地域が変わっていくエピソードに触れてきました。本記事は、第1部「なぜ今、インターンシップなのか?」の最終章です。
目次
- はじめに
- 第1部:長期実践型インターンシップとの出会い
- 第2部:たくさんの学生たち
- 第3部:活躍する学生たち
- 第4部:企業が変わった、地域が変わった
- おわりに
- (告知)「ノリノリのインターンシップ研究(基礎)」も始まります
はじめに
前回(第3回)では、学生のインターンシップを「期間」と「目的」の2つの軸で整理し、最後に、その2軸では捉えきれないインターンシップとして、長期実践型インターンシップがあります。
長期実践型インターンシップは、単に期間が長いインターンシップではなく、教育目的のインターンシップだけでもないのです。企業の事業価値をホンキで創造する、社長の鞄持ちにとどまらず一緒に駆け抜けるそんな本当のような幻のような存在です。
第1部:長期実践型インターンシップとの出会い
私が長期実践型インターンシップと最初に出会ったのは、2010年代初め、東京から名古屋にUターン転職して、市民活動団体「NAGOYA×FOREVER」を立ち上げた頃のことでした。
当時、社会人有志で集まり、若者と一緒に過ごす場があるといいなぁと考えて実践していました。仕事帰りの会社員と大学生が、対等に語り合う集まり。私自身は、若者支援というよりも、社会人として楽しい時間を過ごしている、という感覚もあったかもしれません。
そんな活動をしている中で、ひときわ強い印象を残す学生たちがいました。
まず、社会人と喋るのに全くタジタジしない。それが見た目は普通の感じの大学生。聞いてみると、たくましい姿で、自分の関わっているプロジェクトを語る。経営者と二人三脚で進めている事業の苦労を堂々と話す。失敗談を、笑いながら共有する。20歳前後の学生とは全く思えない様子でした。
「このような学生たちは、どこで何をしていたら生まれるのか」。
聞いてみると、共通して名前が挙がる場所がありました。
長期インターンシップ・・・長期実践型インターンシップ
東海地域における長期実践型インターンシップのプラットフォームで、NPO法人G-net(岐阜市)が運営してきた取り組みに参加している人たちでした。
私は衝撃を受けました。
「これは、私が知っていた採用の単語のインターンシップとは、まったく違う」。
短期の説明会のようなものでも、教育目的の見学タイプのものでもない。学生が実務の当事者として、責任を持って事業に関わる。それが、目の前にいる学生たちのたくましさを生んでいるのかぁ・・・・。
私が大学を卒業した時、こんな機会は知りませんでした。
会社員になった頃にも、こんな経験は積めませんでした。
「なぜ、私はこの機会に恵まれなかったのか」。 と深く思い、
「こんな経験こそ、若者を本当に成長させるのではないか」。
そう感じた瞬間が初めての出会いでした。
第2部:たくさんの学生たち
長期実践型インターンシップを通じて、毎年多くの学生が地域中小企業の現場に飛び込んでいます。
岐阜県、愛知県を中心に、製造業、サービス業、小売業、農業、観光業 ── 業種を問わず、さまざまな企業が学生を受け入れてきました。1社1〜2名の学生が、半年〜1年にわたって、経営者と二人三脚で事業を進める。1年間で延べ数十社、累計では数百社規模の中小企業が、長期実践型を経験しています。
学生の数も、累計すれば相当なものです。20年余りの蓄積の中で、東海地域の長期実践型に関わってきた学生は、数えきれない数字になります。
ある学生は、地域の老舗企業で新規事業の立ち上げに関わりました。商品の企画から営業まで、未経験のことばかり。何度も失敗し、経営者に叱られ、それでも食らいついて、半年後に小さな成果を出しました。
ある学生は、観光関連の中小企業で、地域の魅力を発信するプロジェクトに取り組みました。SNSの運営、動画の制作、現地ツアーの企画。学生だからこそできる視点で、地域の新しい魅力を引き出していきました。
ある学生は、製造業の中小企業で、若手社員と組んで業務改善のプロジェクトを進めました。社員からは煙たがられたこともあったそうです。それでも、データを見せ、対話を重ね、半年後にはプロセスの一部が変わっていました。そして、こうした経験が、学生たちの中に深く残っていきます。そして、学生の本気の姿に、企業の担当者・経営者のマインドが変わり、変革が生まれたケースも少なくないということです。
そして、こんな取り組みは、全国各地の団体が「チャレンジ・コミュニティ・プロジェクト」という集まりを形成し、切磋琢磨して似たような取り組みを行っていました。
のちに私の研究と実践のど真ん中になる長期実践型インターンシップが、全国各地で行われていたとは・・・・この衝撃はすごかったです。

長期実践型インターンシップは、私自身は以下のように定義して示しています。
「一か月以上の⻑期間で、専属のコーディネーターが学生と企業双方に、事前・実施中・事後にわたって伴走支援を行うことで、企業の事業価値を高めながら、学生の教育効果の実現を両立するインターンシップ」
第3部:活躍する学生たち
長期実践型インターンシップを経験した学生たちは、その後、どのような道を歩んでいるのでしょうか。『長期実践型インターンシップ入門』ミネルヴァ書房では、多くの団体の方に協力いただき、OB/OG社会人に対する100名以上のアンケート、10名のインタビュー調査を実施しその内容を本の中身や論文で発表しています。
起業した人たち。
インターンシップ先の経営者の背中を見て、自分もチャレンジしたいと感じた人たち。実家の事業を継いで進化させた人もいれば、まったく新しい事業を立ち上げた人もいます。
地域に根を張った人たち。
インターンシップ先の地域に魅力を感じ、卒業後にUターン・Iターンで定着した人たち。中小企業の社員として地域経済を支えたり、地域おこし協力隊として活動したり、自治体に入って地域活性化に取り組む人もいます。
経営者の右腕になった人たち。
インターンシップ先の中小企業に、そのまま新卒で入社した人たち。あるいは、別の中小企業で同じように経営者と近い距離で働き、若くして責任ある立場を担っている人もいます。
支援する側に回った人たち。
自分が経験した長期実践型の価値を、次の世代に伝えるために、コーディネーターやNPOのスタッフ、大学のキャリア教育担当として活動する人もいます。

それ以外にもいろんな人たちがいます。そう、どこに行っても、学生時代の経験を踏まえて、自分らしいキャリア・生き方を形成している人たちが生まれています。
第4部:企業が変わった、地域が変わった
長期実践型インターンシップによって変わるのは、学生だけではありません。
受入企業も、変わります。
東海地域のある製造業の中小企業は、長期実践型を10年以上にわたって受け入れ続けてきました。最初は「学生に何ができるのか」と半信半疑だった経営者が、今では「学生が来ない夏は寂しい」と語っています。
なぜ変わったのか。学生を受け入れる中で、社員自身が「学生に教える」というプロセスを通じて学び直しを経験する。学生からの素朴な質問が、「なぜ自分たちはこの仕事をしているのか」を社員に問い直させる。学生が持ち込む新しい視点が、組織に風を入れる。
「被越境学習」の現象です。学生を受け入れることで、企業側もまた越境的な学びを得て、変化・進化を遂げていくのです。
地域も、変わっていきます。
東海地域の中で、長期実践型インターンシップを経験する企業同士のネットワークが生まれてきました。「学生をどう受け入れるか」を経営者同士で語り合う場ができ、地域の若手育成のノウハウが共有される。これは、コーディネーターが介在することで初めて可能になる、地域全体の学びの仕組みです。挑戦する地域・エコシステムの形成につながります。

学生が変わる。企業が変わる。地域が変わる。
おわりに
第4回では、長期実践型インターンシップの価値をお伝えしました。そしてこれを大学に取り入れて進化・融合させたものが「ボンディングシップ」になります。それはまた別のところで触れたいと思いますー。
第1部「なぜ今、インターンシップなのか?」は、これで完結です。
4回かけて、長期実践型インターンシップというテーマの「入口」までお伝えさせていただきました。ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
次回(第5回)から、第2部「ボンディングシップとは?」が始まります。長期実践型を基盤としつつ、属人性を超えた再現可能な体系的プログラムへ。新設のCo-Innovation Universityでの挑戦について触れたいと思います。
(告知)「ノリノリのインターンシップ研究(基礎)」も始まります
本連載「ノリノリでインターンシップ研究入門」(入門編)と並行して、もう一つの連載 「ノリノリのインターンシップ研究(基礎)」(研究編)が始まります。
入門編が実践者の方々向けにライトではない内容ですが、分かりやすく提示したいと思っています。さらに、研究編は実務家教員や研究志向の実践者の方々に向けて、インターンシップを「実践と研究の往還」という視点から学術的に深堀りしていく予定です。
入門編で扱う事例の背景にある理論や、自分らしい研究テーマ(ボンディングシップ、被越境学習、地域の人事部、ミギウデ、ローカルキャリア等)の位置付けについて、もう一段深く知りたい方は、ぜひ研究編もお読みいただければと思います。
この記事は、HP「イマゼミ」でも公開しています。
HPはこちら https://imazemi.com/
【連載回】
第1章
Vol.1:連載スタート
Vol.2:錯綜する日本のインターンシップ ─ 4つの歪みと、その先にあるものVol.3:インターンシップを理解する ─ 期間と目的の2軸で読み解く
Vol.4:「長期実践型インターンシップ」という取り組み
第2章
Vol.5 (近日公開予定)
【関連リンク】
今永典秀のnote
関連書籍:『長期実践型インターンシップ入門』(ミネルヴァ書房, 2024・編著)
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